自分の言葉が、結局一番おもしろい

頭を柔らかくして、相手に合わせた表現をする

こんにちは、木暮太一です。今日もコミュニケーション能力を向上させるテクニックについてお伝えしますね。今回は、「相手によって表現方法を変えるための頭の柔軟体操」です。

分かりやすく説明するためには、「相手に合わせた表現」ができるようにならなければいけません。じつは、これが「説明力」の本質です。相手に合わせて表現を変えることができる人は、わかりやすい説明ができるようになります。逆にそれができないと、いくらテンプレップの法則で話を組み立てても、わかりやすくはなりません。

ただ、これは簡単ではないのです。慣れていないと、ふだん自分が使っているパターンでしか表現できません。頭が堅くなっているわけですね。そこで、頭を柔らかくすることが必要になります。相手に応じて、相手が分かるように表現や説明内容を変えられれば、結果的に説明が分かりやすくなります。

 

●私の頭が柔らかくしてくれた英語の授業

私は、分かりやすく説明する技術を大学受験予備校で教えてもらいました。代々木ゼミナールの英語講師・富田和彦さんの授業を通じて、この技術を学んだのです。「英語と分かりやすく説明する技術と、どう関係があるの?」と不思議に感じる方もいるでしょう。そこで、私が富田先生の授業から、どのようにこの技術を身に付けたのか、説明します。

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「しばしば」と「たまに」「時々」に明確な区別をして使っているのなら、まだ話は別です。でもそんな人は稀だと思います。私たちは、中学校の英語の授業で「『often』は『しばしば』と訳す」と教えられました。そして、その訳が適切かどうかは、再検証する機会はほとんどありません。そのため、「often」が出てきたら、そのまま「しばしば!」と訳してしまうのです。

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それまで私は「often」が出てくるたびに、常に「しばしば」と訳していました。でも、時と場合に合わせて日本語訳を変化させることができるようになったのです。子供のセリフだったら「たまに」、上品な老人の言葉だったら「時折り」、学生が言った言葉だったら「最近こういうことよくあるよね」と訳せるようになりました。当時は全く気が付いていませんでしたが、その時まで「ガチガチに堅かった頭」が「柔らかく」なっていたのです。

じつは、このTPOに応じて訳を変える能力が、相手によって説明表現を変える力と全く同じなのです。この「訳し方」ができるようになると、自然に「この相手だったら、この表現が適切だな」と考えられるようになるわけです。つまり、私はこの授業を通して「頭の柔軟体操」を行っていたことになります。そして、徹底的に頭の柔軟体操を繰り返したおかげで、その後は、時と場合と相手に合わせ「伝え分け」ができるようになりました。

繰り返しになりますが、これは頭の良さ(IQの高さ)やセンスではありません。継続的に頭の柔軟体操をしていれば、誰もが身につけられる技術です。ここからは、その「頭を柔らかくする方法」「頭の柔軟体操」を紹介していきます。

 

●動きを表す名詞を動詞に言い換える

まず、基本的な柔軟体操からです。次の言葉をご覧ください。

A.「依存」
B.「黒字化」
C.「確実視」

これらの言葉は「名詞」ですが、動きを表しています。このような動きを表す名詞は、動詞に変換すると、意味が分かりやすくなります。たとえば、Aの「依存」には、「頼る」という意味があります。であれば、「○○に依存している」というより、「○○に頼っている」「○○による」と表現した方が分かりやすいです。

ですから、
「当社の成功は、新製品の売上に依存する」は、
「当社が成功するかどうかは、新製品がどれくらい売れるかによる」

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Bの「黒字化」は、「黒字になる」という意味ですね。このように、「××化」という名詞は「××になる」という動詞に変換することができます。ですから、
「新規事業の黒字化」は、
「新規事業が黒字になった」と表現すべきです。

さらに言うと、「確実視」は、「確実だと見る」と変換できますね。このように、名詞を動詞にして説明することで、格段に分かりやすく、なじみやすくなります。

では、練習です。次の太字の名詞を動詞に換えて表現してください。

  • ・増減:毎月の売上増減に注意しなければならない
    →毎月の売上が増えたか減ったか、注意しなければいけない
  • 動機:A社が粉飾決算をした動機を調べる
    →A社はなぜ粉飾決算をしたかを調べる
  • 購買:消費者の商品購買動機
    →消費者が商品を買った理由

【ポイント】動きを表す名詞は動詞に変換する

 

●熟語が連なった言葉を分解して言い換える

熟語が連なってできた言葉があります。ひとつひとつの漢字は難しくないのに、たくさん並んでいると、なんだか小難しく感じます。こういう言葉は、個々の熟語をバラバラにして、「てにをは」を入れた表現にしてみましょう。

たとえば、「確定拠出年金」という言葉があります。
この言葉を文章にすると、「拠出が確定している年金」となります。
「確定拠出年金」と漢字が六つ並んだ言葉に比べて、とっつきやすくなりましたね。さらに言うと、「拠出」とは「出す」という意味ですから、ここでは「支払う」という意味になります。要するに「確定拠出年金」とは、「支払うお金が確定している年金」なんですね。

日本語としての意味を把握するだけなら、これで問題ありません。でも、「支払うお金が確定している年金」と言われても、年金にくわしくない人にはピンと来ないと思うので、この先を考えてみましょう。
「わざわざ『拠出が確定している』と言っているということは、ふつうの年金と違う」ということになりますね。
普通の年金は「確定給付」です。これも分解すると、「給付が確定している」、つまり「支払われる年金が確定している」ということになります。
そう考えると、確定拠出年金は、「支払われる年金が確定していない」ということなんです。
ここまで考えていくと、確定拠出年金は、「支払う金額は決まっているけど、もらえる年金の額は決まっていないタイプの年金」ということが分かりましたね。
単純に熟語として見ただけでは、ここまでのひも解きはできません。熟語を文章として「開いて」読むことで、深く理解でき、また他人にも分かりやすく説明ができるのです。

では、また練習です。次の熟語を文章にしてみましょう。

・外国為替証拠金取引
いわゆるFXのことですね。このまま考えると、「外国為替の証拠金取引」です。
「外国為替」とは、外国の為替で、為替はもともと「交換する」という意味です。つまり外国のお金と交換するということです。
そして、「証拠金取引」とは、「証拠金で取引する」ということです。ご存知の方も多いと思いますが、FXの取引では、自分のお金を直に使うのではなく、担保を預けることで取引ができます。その担保が「(お金を持っていることの)証拠」となって、取引ができるのです。
つまり、「外国為替証拠金取引」とは、「担保を預けて外国の通貨を売買する仕組み」のことです。

・加重平均
加重平均とは、「『重さ』を加えて、計算した平均」と読み取れます。でもこれだけだと意味が分かりません。「重さ」を「ウエイト」と言い変えたらどうでしょう? 「ウエイト」とは、「比率、%」のことです。また「加える」というのは、「加味する」と考えられますから、
「加重平均」は、「『比率』を『加味』して計算した平均」と言い換えることができます。

【ポイント】熟語が重なった言葉は、分解して「てにおは」を入れた表現にする

 

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そのため、何かを説明する時には、極力避けなければいけません。でも、メッセージとして伝えなければいけない時は、どう回避すればいいでしょうか?

たとえば「税金の存在が、企業の体力を奪う」という例文があります。すごく堅苦しく、難しく見えますね。
このような無生物主語が入った文章が分かりづらいのは、その「主語」が本来、その「動作」をとることができないからです。だから、具体的なイメージを頭に描くことができず、理解ができないのです。
こういうときには、次のようにすると、分かりやすい文章になります。

1.「受動態」にする
2.「~によって+自発」にする

1.受動態に「開く」
「税の存在が、企業の体力を奪う」の場合、「奪う」を受動態に換えて、「奪われる」とします。何が奪われるのかというと、「企業の体力が」ですよね。そして、「税の存在」とありますが、「存在」という名詞は動詞に変換できますので、「税の存在=税があると、税があることで」となります。
これをつなげると、
「税の存在が、企業の体力を奪う」
→「税があると、企業の体力が奪われる」
となります。後者の方が圧倒的に伝わりやすい表現になりました。

2.「~によって+自発」に「開く」
「世界的な不況が、企業の危機意識を増幅させる」という文章はどうすべきでしょう?
この場合、「世界的な不況のために、企業の危機意識が増幅させられる」と受動態に開いてもいいですが、まだ分かりづらいです。そのような場合には、
「世界的な不況によって、企業の危機意識が増す」とします。

どちらにしても、無生物主語を「主語」として捉えていると、非常に分かりづらくなってしまいます。
では、練習です。次の文章に入っている無生物主語を変換してください。

・不確実性がビジネスチャンスを生む
→不確実性があると、ビジネスチャンスが生まれる

・酒が人生を狂わせる
→お酒を飲みすぎると、人生が狂ってしまうことがある

このように、難しい言葉を言い換える、相手に伝わりやすいように変換することで、どんどん説明力が身についていきます。

 

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